new

一品ずつつくり終えて、味見する時は格別で、皿や小鉢に盛りあげて、写真家に手渡す時のよろこびは、『赴粥飯法』にも書かれていない心の躍動であった。しかも、畑で出て、収穫、あるいは山を駆け走って掘る、まびくの気分は同じ空気を吸っているはずなのに、いつもとちがった。
(本文より)
心筋梗塞でほとんどの心臓を失いながらも、軽井沢から北御牧にうつり、畑にふれ、見つめながら生まれた百撰料理の数々。著者の晩年に発表された『精進百撰』を新たに再編集、この度新装復刊された滋味深い一冊。
(2022年・田畑書店)