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個人的な体験を文章にするということは、静かな浜辺で珊瑚を拾うようなものだと、私は思います。誰かに見せることを前提とせず、誰からの評価も必要としない、ただただ純粋な行為だからです。どこまでも続く浜辺に堆積した無数の珊瑚から、これだと思うひとつを拾い上げて手の中に収めること。それは滾々と流れていく日々から何かしらの出来事を取り上げ、文字にしたためることに似ています。
(はじめに)
2016年より、山で見た景色をハンカチに仕立ててゆくプロジェクト〈MOUNTAIN COLLCTOR〉の活動で知られる鈴木優香さんが2021年から2022年にかけて書いていた「山岳収集通信」という読み物に、いくつかの話を加え一冊にまとめたもの。
コロナ禍の陣間山から高尾山の山行。鳴虫山で飲んだチャイの味。ふと見上げた太陽の、周りに広がる虹色の輪。奄美大島の光。すべての出来事が等しく愛おしい。ゆっくりと、山道を踏みしめるように書かれた20の物語。
(2025年・MOUNTAIN COLLECTOR)