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何がしきりにわたしたちを臆病者にさせるのだろう。わたしたちを絶えず孤立させ、ああはなりたくないと人に思わせ、軽蔑されやすい顔に変貌させ、何かを証明しなければと常にみずからを追い立てる。この病の名は何だろうー本文より
主婦をしながら英米文学の翻訳者となった著者による、中年女性の「ある感覚」を掬い取る初邦訳短編集。中年女性の友情に入る亀裂を描く「今日やること」、妻の外見を愛し内面を見ない夫の視点で描く「夏風邪」、女の惨めな学生時代を美化して記憶し同級生の男が映画を撮る「水の中を歩く」、冴えない女性社員が先輩社員に抱く淡い恋心を描く「その猫の名前は長い」など9編を収録。巻末には、大阿久佳乃による英米文学作品と本書の関わりを解き明かす解説付き。
(2024年・里山社)