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私は本作りで何ができるだろうか。私ができることはささやかだけれど、本の力で“生きる力”が沸いたらよいと思う。顔の見えない読者が、ひとりでも、ふたりでも、生きたいと強く思えるような本づくりをしたい。ちなみに余談だが、rn pressから出ている本は見た目が“かわいい本”が多いせいか、どうも私は「乙女ちっくな」編集者だと思われているようだ(自意識過剰だろうか。いや、実際、定期的に手伝いたいという若者から連絡をいただくが、みんな綿菓子のような人ばかりだ)。どうか本を読んでほしい。rn pressの作家たちはみなとんでもない熱気と狂気で書いている。私がついてきた嘘を吐き出すためにつくりはじめた文芸誌「USO」は今年で5年目になる。これから出版していく本も、いい感じに“こってり”している。
(本文より)
両親の不和が当たり前の家庭で育ち、母と兄を自死で亡くし、酒浸りの父もやがて他界。家庭というものを知らずに育ったrn press編集者・野口理恵がそれでも周囲の他者と関わりながら生きていく。押し付けでも美談でもなく、いつの間にか自然に生きる力が湧いてくるエッセイ。
(2025年・百万年書房)