new



"おマンチェ"などという軽薄な言葉が流布していた時代に音楽を真剣に聴き始めた自分は、それから度々音楽業界で起こるムーヴメントを冷静に淡々と傍観することになる。ダンサブルなビートとドラッグ・カルチャーを反映したドラッギーな歌詞やサウンド。イギリスの工業都市から勃興したそれは、
その後長い休眠生活に入るストーン・ローゼスが「ワン・ラブ」をリリースし、ハッピー・マンデーズの『ピルズ・ン・スリルズ・アンド・ベリーエイクス』が全英チャートの上位を駆け上っていた1990年から、プライマル・スクリームが『スクリーマデリカ』をリリースする1991年にかけてが全盛期で、一回目の愛の夏のフレーヴァーをもじって「セカンド・サマー・オブ・ラブ」と呼ばれ、ダンス・フロアから起こった享楽的なレイヴ・カルチャーと共に、60年代のあの愛の夏を経験できなかった極東の島国に暮らす高校生の自分はその同時代性にワクワクした。やがてレイブ・カルチャーは国家権力に取り締まられ、急速に商業化するか地下に潜り、あの夏は終わった。あの魔法がかかったような、狂騒的な夏とはなんだったのだろう。
ニュー・オーダー、808ステイト、ザ・ファーム、ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズ。マンチェスターという工業都市から生まれ、享楽的で狂騒的なビートと共にシーンを席巻した"マッドチェスター"と呼ばれたインディ・ムーヴメントとはなんだったのか。その光芒を関係者(ジョニー・マー、グラハム・マッセイ)へのインタビューと共に徹底的に描くヒストリー・ブック。
(2024年・スローガン)