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パンクの系譜学

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3歳年上のバイトの先輩Nさんはたとえ真夏であろうが、大雪の日であろうが、必ずスタッズのついた重そうな革ジャンを着て出勤した。Nさんはぼくたち日和った新人バイトの教育係だった。時にはぼくらを恫喝し、時にはやさしく諭し、時には大衆居酒屋でビールを奢ってくれた(こんな先輩、『不適切にもほどがある』さながらに現代ならアウトだろうけど)。 ある日の休憩時間のこと。コンビニの弁当を食べ終えてダラダラ煙草を吸っていると、Nさんが一冊の本を取り出した。ヴェイユの『工場日記』だった。どちらかというとハードコアめのパンク・バンドのヴォーカリストだったNさんがヴェイユを読んでいることに驚いたが、またある日にはそれが『忘れられた日本人』になり、『スペクタクルの社会』に変わった。 どちらかというとパワハラめいた態度のNさんが嫌いだったが、今となってはもっときちんと本の話をしておけばよかったと思う。それにNさん率いるパンク・バンドのライブにも足を運んでおけばよかったかな。 保守体制に対するイギリスの労働者階級の怒りから始まった「パンク」。 その背景にあったアナキズムやコミュニズムという思想性やダダイズムをはじめとした前衛芸術、アメリカの奴隷制、フォーク・ミュージックやガレージ音楽、シチュアシオニトやキング・モブなどの運動、ライオット・ガールズやアジアのパンクシーンにまで繋がる、研究者によるパンクから紐解く人民の抵抗と挑戦の歴史。 (2024年・書肆侃侃房)

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