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1969年8月9日未明。映画監督ロマン・ポランスキーの妻で妊娠中だった女優シャロン・テートとその友人たちが、自宅で狂信的なカルト信者らに刺され、26歳で母子ともに亡くなりました。実行犯の一人、テックス・ワトソンはシャロンらに向かってこう言ったといいます。
「俺は悪魔だ。悪魔がなすべき行いを果たすために来た」
クエンティン・タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でも描かれた、かの有名な「シャロン・テート殺人事件」はラリった頭でピースとラブを唱えていたヒッピーたちを震撼させ、文字通りカウンター・カルチャーを終焉に導いた。実行犯であったチャールズ・マンソン率いるマンソン・ファミリーはデス・バレーにあるバーカー・ランチという牧場を根城とし、黒人によって白人が撲滅させられるという人種戦争が起きるという終末論を信じていたといいます。またさまざまな悪魔崇拝秘密結社や白魔術結社との交流があり、生贄の儀式なども行なっていたそうです。
ビートルズの解散、シャロン・テート殺人事件やオルタモントの悲劇によって始まったヒッピーの凶暴化。享楽的でピースフルな夢の終わり。
隣人がある日突然襲ってくるかもしれないという疑心暗鬼と潰えた夢のあとの虚無感。そうした時代の空気を捉え、1970年代前半にはアメリカでオカルトブームが起き、大量にホラー映画やオカルト映画が生まれました。
ピーター・フォンダとウォーレン・オーツという70年代を代表する俳優を主役に据え、オカルト映画ブームに乗って製作されたカルトムービー『悪魔の追跡』のリバイバル公開を記念し、制作されたこのzineでは、本編の詳細な特集に加え、マンソン・ファミリーにまつわる論考、マカロニ・ウエスタン研究家セルジオ石熊によるウォーレン・オーツとピーター・フォンダのフィルモグラフィ研究、宣伝プロデューサー岡村尚人による1970年代オカルト映画の解説などを収録。
(2023年・コピアポアフィルム)