other

"音楽ってのは感情のフィードバックだ。だから自分の状態が悪い時はどんなにいい音楽も共鳴することはない"
潮風に吹かれ、カモメが空を羽ばたくと同時にiphoneから流れる「風をあつめて」。村上春樹を読みながら、繰り返し繰り返し聴いた『HOSONO HOUSE』。まるでエドワード・ヤンの映画のようにはじまる物語と、小さな恋の歌。ぼくたちがアメリカの文化に恋をして、アメリカで作られた歌や小説に青春を捧げ、その音楽に共鳴したように、この物語に登場する台北で暮らす若者たちも日本の文化に恋をして、自らの人生と音楽を重ねわせるようにもう二度と戻らない一瞬を生きている。
村上春樹のエッセイ『猫を棄てる 父親について語るとき』の装画で知られる台湾出身の漫画家が、はっぴいえんどや細野晴臣、村上春樹の小説など日本文化を通奏低音として綴る、音楽と恋とアイデンティティについての物語。
(2022年・KADOKAWA)