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何十年もジャズや映画の文章を書き続けてきたのに、たった一冊しか本を出版していなかった植草甚一の自邸にあったはち切れそうな革トランク。それに、責任編集として植草甚一が関わった伝説の雑誌『ワンダーランド』の顛末。この二つの章だけを読んだら、もう全部を読んだ気になってしまったくらい感動した。なにも「ことば」を「文字」に起こし、束ねたり、人やモノの隙間にあるものをまとめることだけが編集なのではない。時にはその人の関わり方や生き方を「編集」と呼ぶこともあるのだ。
伝説の編集者による思索と実践の日々のなかで生まれた、「編集」というあいまいで、時にはアプリオリな営為の真理。30代のフリーランス編集者による編集の巨人・津野海太郎のアンソロジー。
(2022年・黒鳥社)