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完璧に効率を極めた世界では、私たちも姿を消さざるを得ない。/「本当にこれでいいと思う?」彼女は自分に問う。そして死んだ男に問う。二人の間にある膜は薄い。
リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
異国のホテルで、木の下で、空港のトランジットで、もうそこにいない誰かを伴走者として本を読む。
だが、もうそこにはいない彼と、わたしたちの間にはほんの小さな違いしかない。「不在」とはいわば公園や道ばたに生えたなんの変哲もない木々から、種を超えて、命あるもの同士をつらぬき間断なく進んでいく、大きな流れのようなものだから。
今は亡き編集者であり同誌編集人・小林英治を偲ぶように編まれたリトルプレス『なnD』11号。
ひとり北欧で小林氏の幻影を追うようにリチャード・パワーズ『オーバーストーリー』を読みふける。冒頭の三品輝起氏「読むことの木」が圧倒的に素晴らしい。
(2024年・なnD)