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決めたぞ。戦時下での日常で起きた重要なことを、きょうからひとつひとつ書き残すことにする。そういうことを忘れないために書くのだ。この戦争がどのような結末を迎えるにせよ、意図して、また意図せずに忘却され、改変され、解釈され、また再解釈されてしまう前に。
ー1941年1月16日
ドイツの詩人・作家エーリヒ・ケストナーが第二次世界大戦中、ひっそりと書き続けた「青い本」と呼ばれる1941年、1943年、1945年に束見本に付けられた3つの日記。それらを底本として刊行された戦時下の日記には第三帝国の下劣さ、馬鹿らしさを批判し、戦時中の日常のおかしみや恐ろしさを書き留めている。底本となる青い本を模した造本も美しい。
(2024年・岩波書店)