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政治闘争の1960年代と出世志向の1980年代に挟まれた、ひどい服装、ひどい髪型、ひどい音楽の時代。「70年代の完璧なシンボルは愛玩用の石(ペット・ロック)だった。ただの石ころ(ペット)が何もせずにただそこに鎮座しているだけなんだから」
イランでの人質、ベトナムでの敗北、ウォーターゲート、インフレとガソリンスタンドの行列。人びとの記憶の中に「ひどい時代」と留められていても、1970年代はアメリカの人種関係、宗教、家庭生活、政治、ポップカルチャーに変革をもたらしていた。ディスコティーク、カントリー・ミュージックの大衆化、サンベルト(南部と南西部)の隆盛、個人の自由の新しい倫理観の台頭、スコセッシとコッポラの型破りな映画、パンク・ロック、サタデーナイト・ライブによる権威への軽視、フェミニズムの台頭による男と女の戦い、カトリックの保守派とプロテスタントの福音派の接近、新右翼、新保守主義の台頭。
60年代アメリカ文化に精通する歴史学者が、現代に通じる様々な70年代の文化・社会・政治における布石を横断的・多角的に読み解きながら、ダイナミックに変容するアメリカを通じて、現代社会の光と闇を照射する、400ページに及ぶ大著。索引注釈も充実。長期休暇の読み物としてどうぞ。
(2024年・国書刊行会)