new
"また、伯父さんには父性というものはない。いや、伯父さんは父性を少年に対してあまり感じさせてはいけないのだ。伯父さんは少年のずっと年の離れた兄のようなものなのだ。それは、少年がもっとも信頼して客観的に見ることのできる大人の男性であり、父と比較対照して見つめられるということもあるからだ。"
(永井宏 「ぼくも伯父さん」)
久しぶりに永井さんのこの文章を再読してハッとした。レコード蒐集に余念がなく、『POPEYE』などを読み、コーヒー好きで、インテリアも詳しくて、シティボーイかぶれ。ぼくの周りにはそんな少し年上のお兄さんのような、若年化した中年しかいない気がする。誤解を恐れずに言うならば、これはまさに日本人男性全体が「伯父さん化」していることの証左ではないだろうか。父性を回避することの愉しさと恐ろしさ。父親にはなくて、伯父さんにしかない視点。いまの日本にはどちらが必要なのだろうかと考えている。
ファッションブランド、メンズビギが発行元となり刊行されたカルチャーマガジン「VISAGE」の三号目。今号より編集長を小野郁夫が務め、編集に小西康陽、ジャック・タチ自身へのインタビューや永井宏、生田英考らの寄稿など、洒脱で軽妙なタチ・タッチを踏まえた当時としては斬新なレイアウト組みの素晴らしさ。非常に綺麗な状態です。
(1989年・メンズビギ)