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「タル」は仮面、「チュム」とは踊り。韓国では仮面劇のことを「タルチュム」と呼ぶ。タルチュムは、朝鮮社会で先祖代々苦しみに耐え、虐げられてきた庶民たちによる大衆芸能だ。彼ら民衆のパワーが野外のマダン(広場)で支配者への揶揄や風刺、そして笑いとして爆発する。その劇に神はいない。あくまで人間たちの愚行が主役で、支配者が口達者な平民にやり込められ、愚弄される。それを見た民衆がげらげら笑う。身分や社会の善悪、儒教思想や階級制度。そうした社会構造を一旦チャラにして皆が腹を抱えて笑うのだ。
韓国の私設フォークアート・ミュージアム「温陽民俗博物館(ONYANG FOLK MUSEUM)」所蔵する、韓国の12の地域から仮面舞踊(タルチュム)で実際に使用された「マスク」を紹介する一冊。多くのビジュアル図版とともに、韓国仮面劇の歴史や特徴を解説するエッセイも収録。各章トビラのモノクロ写真は韓国を代表する写真家の具本昌 (Koo Bohnchang) によるもの。
(2023年・Onyang Folk Museum)