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"未来を人質に現代社会における抑圧を正当化するのであれば、それは本末転倒でしかない。未来は他ならぬ現在の私たちのために存在しなければならないのであって、逆ではない。未来のために現在を犠牲に捧げ、過去を忘却していくのではなく、むしろ過去から回帰した未来を現在の只中に埋め込まなければならないのではないか。しかし、どのようにして?"
分子となって銀河に散らばる全祖先の復活を唱える"ロシア宇宙主義"から派生した、ウクライナ侵攻の思想的背景とされる新ユーラシア主義や、シリコンバレーを中心に広がるトランスヒューマニズム。サン・ラーら黒人アーティストが抑圧的な現実の〈外部〉としての宇宙を志向したアフロフューチャリズム。物理世界の制約からの解放としてのユートピアを目指したサイバースペース/メタバース。「私」の身体を未知のもの、"ユートピア"として捉えようとしたフーコー。
どん詰まりの現実。その〈外部〉の暗闇としての宇宙(スペース)、そしてほの暗い過去の深淵になぜ人は未来を到来させる光を見るのか。気鋭の文筆家が現代社会の背後にひそむ〈宇宙〉をめぐる思想を抉り出す待望の著書。
かつての〈WIRED〉を貪るように読み耽っていた人たちへ。
(2023年・早川書房)