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はじめて間もない頃、たとえば全然お客さんが入らない日やお客さんが何も買わずに店を出ていくときには心が折れそうになった。それで店を畳もうとは思わなかったが、自分がやっていることを否定されたような気持ちになり、町のなかで存在がなくなって消えてしまったような気分がした。
小倉さんの日記や文章を読んでいるとおなじような思いを抱いて店を営んでいたのだなと思うと共に、店を続けるということはたくさんの思いや縁や偶然を繋いで生きているのだということがよくわかる。
店を始めるときの溌剌さはやがて続けることの難しさに直面し、眉間に皺が寄り始める。たくさんの逡巡や葛藤を経て出した答えは、どんな形にせよその人にとって最善で必然だ。小倉さんの決断にぼくは遅ればせながらエールを送りたい。
よすがを求めるように集まった人たちと、うつろいながら、たしかめるように生きた大切な日々。
かつて新潟県新潟市で写真集を中心にした新刊本と古書の書店〈BOOKS f3〉を営んでいた小倉快子さんによる、本屋をはじめてからと本屋を閉じるまでの日々。綺麗ごとではない本屋のリアルがここに。
(2023年・セルフパブリッシング)