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かつて、髪を長く伸ばし、ギターを手に取ることが重要な時代があった。それは遠い国から流れてきたひとつの風俗とも言えたが、ほんとうの生き方を探している人たちにとって、それはひとつの精神性にも成り得た。高度経済成長を遂げた文明生活に背を向け、自分たちが追い求める生業と暮しを作る。そのような生き方をすることは今日珍しいことではないが、1960年代当時はとてもラディカルで勇気のいることだったのだ。
ファッションや風俗としての「ヒッピー」はすぐに消滅したが、精神性としての「ヒッピー」は、2023年のいまもまだ生きのびている気がする。現にぼくの知る若い人びとは都会を離れ、土に触れ、内省的な暮しを選んでいるではないか。
1960年代、物質文明に背を向け、南海の火山島や信州の高原にコミューン(共同体)を築いた日本のヒッピーたち。風月堂、LSDやロック、サイケデリック・アート、ヒッチハイクや共同生活の日々を日本のヒッピーの草分け的存在である山田塊也氏が、1990年に第三書館より刊行したのジャパニーズ・ヒッピー・カルチャーの名著。この度増補改訂版が登場。
山田塊也による日本初のサイケデリックアートとも言える『部族』第2巻1号の抜粋版、寄稿冊子(Flynig Books 山路和広「書物とカウンターカルチャー」・山口晴康「The Long Walk for Big Mountain いのちの流れ、いのちの道」)が付属。
(2023年・森と出版)