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詩はいたるところに落ちている。例えば夜の停車場。雑踏や酒場。人のいない公園。それに苦いコーヒーの出てくる、場末の喫茶。
「詩を書くことは野蛮だ」とかつてアドルノは言ったが、オオヤミノルのそれは優雅でセンチメンタルだ。街場に落ちている空気の塵を集めて、経営論やメディア文化論から遠くはなれて、彼は彼にしか書けない一遍の長い詩を作った。その語り口が万人受けするものではないが故にマイナーポエットに甘んじているのだとするならば、オオヤミノルはコーヒーや喫茶というジャンルを越えて、ついにこの本によって21世紀の消費文化全般を総括してしまった。
われわれは一体誰と契約をしているのか?消費者優位の暗中模索の時代をサヴァイブする「いい店」の条件とは。焙煎家・喫茶店主オオヤミノルによる『珈琲の建設』に続く待望の新刊。
(2023年・誠光社)