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本書では、私が生まれ育った九州・熊本でふつうの人びとが経験してきた歴史を掘り下げようとした。とくに私が地元でありながらも目を背けてきた水俣に関するテキストを中心に読みこみ、自分がどんな土地で生を受けたのか、学ぼうとした。そこには日本という近代国家が民の暮らしに何をもたらしてきたのか、はっきりと刻まれていた。(「はじめに」より)
水俣、天草、須恵村。自分が生まれ育った土地の、先人たちと現代をつなぐミッシングリンクのようなもの。今もむかしも「民」がどのように暮らし、あえぎ、虐げられ、智慧を授かり、生き抜いてきたのか。国家と自分たちのあいだにあるゆがみをどのように考え、捉えてきたのか。稀代の文化人類学者が民衆の視点から読み解く、この国の、この世界の「民」と呼ばれる小さき者たちの生活誌。
(2023年・ミシマ社)