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まだ息子が妻のお腹のなかにいる頃から、夜寝る前に絵本を胎内にむかって読み聞かせてきた。今も定期的に図書館で絵本を借りて、暇があれば息子に絵本を読んでいる。ぼくや妻はそれが息子にとって良いことだと信じて疑わないけれど、絵本を子どもに読んで聞かせることにはどんな意味があるのだろう。ことばを知る、覚えるという以外に、絵本にはやっぱり子どもが目を輝かせるキラキラとした物語の魅力があると思う。いつの間にか惹かれ、引き込まれてしまうユニークな物語、悲しいお話、登場人物の不思議な生い立ちや暮らしぶり。
毎日の日常や人生のなかに、そうした物語はときおりふらりと現れて、ぼくたちのことを見守っている気がすると感じる時がある。絵本はそんな風に子どもたちの生活に根ざしていき、みんな大人になっていくのだ。ぼくがそうだった。
長野県の老舗書店「今井書店」の高村志保さんが綴るのは絵本を通じた人生と思い出、そして愉快で楽しい絵本の物語。きくちちきさんのやさしく柔らかな装画とともにお楽しみください。夏葉社・島田潤一郎さんのレーベル「岬書店」より2021年に出版された『絵本のなかへ帰る』が新たに4篇を加えた完全版として夏葉社より刊行されました。
(2021年・岬書店)