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「この世はフィクションなんだ、ただしとても美しい。私はその秘密を見つけるためにただ 『写して』いるんだ。でもそれには目を透明にしなくてはいけない。あの状態にならなきゃいけない。でもだれにもあの状態を説明することはできないんだ」。彼女の写真を見ると、いつも、そう言われている感じがする。
(吉本ばなな「里佳ちゃんの謎」)
東京都写真美術館で開催される写真家・野口里佳の個展「野口里佳 不思議な力」に際し刊行される本書では、30年にわたって写真・映像表現を追求してきた野口の過去の作品シリーズと近作、新作がそれぞれの作品が呼応しあうように構成されています。初期作品「潜る人」(1995年)から、「夜の星へ」(2014年、2015年)、父が生前に遺していたネガを、野口の眼差しを重ねてプリントした「父のアルバム」(2014年)、そして最新作「ヤシの木」(2022年)まで、写真家が見つめてきたもの、そして「不思議な力」によって導かれるように、レンズを覗き込み捉えてきたものをまったく新しく斬新な構成で我々の眼前に提示してくれます。吉本ばななによる寄稿「里佳ちゃんの謎」も収録。ポストカード付き。
(2022年・赤々舎)