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"そう、職業料理人ではない私たち、つまり家庭料理人がうちでつくる料理は、渦巻く各々の生活の中に完全に溶け込んでいます。もしも、生活から、料理の部分だけをきれいに切り取ることができたとしても、切り離された瞬間に、それは家庭料理とは呼べなくなってしまう。"
(あとがき 家庭内料理人)
白米へのこだわり、森正洋の白山の飯碗、柳宗理の輪郭、大同電気釜、高山なおみの塩豚。来る日もくる日も台所に立ち、米を炊き、出汁を取る。木村さんが嬉々として綴る、その風景から見えてくるものの小さなトリビア、必然から生まれた蘊蓄はわたしたち家庭料理人を照らしてくれるささやかな光のようだ。すべての家庭料理へ捧げる、豊潤で奥深いエクリチュール。
(2022年・平凡社)