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お客様は神様じゃないし、従業員は家族でもない。でもふとした瞬間にお客様が友人になり、従業員が同志になる。そんな不思議なエネルギーを持った店を何軒か知っている。彼らは「はたらく」ことを超えた「よろこび」によって突き動かされ、生きている。はたらく、ということは苦痛でも、従属することでもない。はたらくことの真実はよろこびを分かち合うということなんじゃないだろうか。
グリニッジ・ヴィレッジとロウワーイーストサイドをつなぐエリアにあったレコード店のドキュメンタリー『アザー・ミュージック』と 、日常に蔓延する女性蔑視とに立ち向かうスポーツバーで働く女性たちを描いた劇映画『サポート・ザ・ガールズ』 という 2 本のロードショー作品の W 仕様の公式パンフレットも兼ねた、3年ぶりの刊行となるムービーマヨネーズ第 3 号のテーマは「お仕事」。
音楽とレコード、そしてニューヨークの文化にも造詣の深い⻑谷川町蔵氏や佐久間裕美子氏による『アザー・ミュージック』の映画評やコラム、田中東 子氏や岡田育氏による、女性と働くこと、または女性と乳首に焦点をあてた『サポート・ザ・ガールズ』の論考、アメリカにおけるスポーツバーの存在に着目した鈴木透氏のコラムに加え、なんと本秀康氏による特別描き下ろし漫画「レコスケくん 僕の『アザー・ミュージック』の巻」も収録。また、小津安二郎監督の原節子主 演による紀子三部作を、クィア、フェミニズム批評の観点から評価する可能性を開いた、映画批評家ロビン・ ウッドによる画期的な論文を初邦訳(翻訳:早川由真)。さらには澤部渡(スカート)や岡田拓郎、トクマル シューゴなど総勢 21 名のミュージシャンによる圧巻のディスクレビューも。そのほか、ココナッツディスクや ステレオレコーズなど国内人気レコード店や、松永良平氏(リズム&ペンシル)、#MeToo 以後のハラスメント と映画の関係を捉え返す⻄口想氏によるテキストなど、読みどころ満載の仕上がり。
(2022年・グッチーズ・フリースクール)