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少し前のこと。20代の男の子とどんな音楽を聴いているのかという話になった。彼は「スーパーオーガニズム」とか「リンダ・リンダズ」が好きなんだとか。ぼく「いいじゃん!じゃあブルーハーツも好きなの?」彼「え?なんすか、それ」ぼく「いや、ブルーハーツってほら、リンダ・リンダズのバンド名って…」彼「spotifyに入ってないすね、それ」ぼく「…」。
また少し前のこと。
ピンク・フロイドの「おせっかい」のTシャツを着た男の子が店に入ってきた。会計の時に、ぼく「フロイド好きなの?」彼「へ?何すか、それ」
ぼく「いや、そのTシャツって…」彼「あー古着のTシャツ集めてんすけどよくわかんないすよね」。
若者たちに告ぐ。ぼくはうるさいおじさんにはなりたくない。でも、ぼくはうるさいロックおじさんに今ならなってもいいと思っている。きみたちに足りないのは過去の音楽遺産に対するリスペクトの気持ちだ。音楽を愛するなら、その素地や影響下に目を向けたまえ。ロックやジャズやブルースにどっぷりつかりたまえ。30年代の音楽でスウィングして、50年代のロックンロールでツイストを踊るんだ。そしてそんなTシャツ着てるんなら、書いてあることに興味を持ちたまえ。そこからロックの果てしないスワンプが広がっているかもしれないというのに。
きみたちにこの本を捧ぐ。何なら一人ひとりに配って歩きたいくらいだ。
「ジャニス・ジョプリンはいつからヘロイン漬けだった?」
「クラプトンがクリームを結成した経緯は?」
50年代ロカビリーから70年代プログレッシブやニューウェイブに至るまで、伝説のロック&フォーク音楽雑誌「ZIG ZAG」を創刊した音楽ジャーナリスト、ピート・フレイムがアーティスト同士の相関関係を樹形図で表し、様々なトリビアを記したファミリーツリー。主要なロックバンドの変遷を表した31枚のツリーを観音綴じにし、著者コメントを全文訳出。まさに全音楽ファン必読の書。
(2022年・みすず書房)