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(フリーペーパー付き)MIKE MILLS finding the film - director scouts for C’mon C’mon

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だいぶ前に〈COWBOOKS〉で開催されたマイク・ミルズのエキシビジョンでは、本を買うとマイクのデザインによる包み紙に本を包んでくれたことを覚えている。その包み紙にはマイクのフェイバリット・ブックが10冊書かれていて、ラム・ダスの『ビー・ヒア・ナウ』や『フラニーとズーイ』らに紛れ、リルケの『若き詩人への手紙』が含まれていた。リルケのその本が挙げられていたことを意外に思ったぼくは、すぐに新潮文庫版を買い求めその薄い本を読み終えてしまったが、一体この本の何が良いのかがさっぱりわからなかった。 それから少ししてマイクの初の長編映画『サムサッカー』が公開され、いつの間にか彼はごくパーソナルな視点から普遍的な人間の情動や感情の機微を描く、寡作ながらも良質な映画を作るフィルムメーカーになっていた。 グラフィックデザインや映像ディレクター時代の作品からは見えてこなかった彼の個人史ともいうべき物語のなかに浮かび上がるのは、世代の異なる人と人とが関係に悩み苦しみ、対話を試みたり、一瞬心を通わせたり、その関係の中にわかり合うことの不可能性を見出す人間たちの姿であり、ごく個人的で小さな日常が、実は大きな宇宙のうねりや歴史や社会の中に息づいているのだ、という静かな認識であった。 "一般的なモチーフを避けて、あなた御自身の日常があなたに提供するモチーフへとのがれて下さい。 あなたの悲しみや願いや、過ぎ行く思いや、何か一つの美に対する信仰などをえがいて下さいーそれらすべてを、熱烈な、しずかな、謙虚な誠実さをもってえがいて下さい。そして自らを表現するために、あなたの身のまわりの事物を、あなたの夢の中の姿を、あなたの追憶の対象を用いて下さい” (リルケ『若き詩人への手紙』) マイクの作品をすべて観終わった後に、リルケの『若き詩人への手紙』を読み返してみると、この薄く小さな本がマイクにとってどのような影響を及ぼしたのかがよくわかる気がする。これは彼自身が生み出すアートに対する一つの態度であり、道標だったのではないだろうか。 "director scouts"、日本でいうところのいわゆる「ロケハン」という映画の準備段階において、ロケーション(風景)を選ぶ作業にマイクが相当の熱意や慎重さを持っているかがこの写真集を読めばよく分かる。 「場所は物語を包み、映画の肉体となっていく」。マイクが考えるそうしたロケーション・スカウトへの誠実さは、かのリルケが若き詩人に伝えたメッセージどおりではないだろうか。 まるでビーチ・ボーイズの『スマイル』のように永久欠番となっていた雑誌『relax(リラックス)』のペーパーバックシリーズ第7巻が、当時の編集長・岡本仁さんの長年の想いが結実し、企画から22年の歳月を経てリリース。 マイク・ミルズが撮影したモノクロ写真を中心に、新作映画『カモン カモン』のためのロケーション・ハンティング時の様子を128ページに渡り収録。映画制作に対する考え方が綴られたマイクによる序文もお見逃しなく。 もれなく特製フリペ付き。 (2022年・ランドスケーププロダクツ)

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