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"ジル・ドゥールズの「こんな希望を捨てるわけにはいかない。ドラッグやアルコールを使用しなくとも、その効果だけが、世界の表面で再体験されて、回復されるという希望である。(略)一九六◯年代に躍動していた希望を捨てるわけにはいかない。」という言葉にいつも励まされて、ずっと制作を続けて来た。"
安保闘争や公民権運動、世界じゅうの独立運動に呼応し、アフリカ大陸や星条旗が描かれ、コルトレーンや土門拳の写真がコラージュされた「プラカード」(1961)、自身の妊娠初期に「人工胎盤ができたら、女性は本質的に開放される」というマニフェストとともに制作された「人工胎盤」(1961)などのセンセーショナルな同時代性を持った作品群。1957年に福岡で発足した前衛芸術グループ〈九州派〉のメンバーとして活動を開始した美術家・田部光子に光が当たったのは、2004年に熊本現代美術館に依頼された「人工胎盤」の再制作によってでした。福岡市美術館で開催された同名企画展の図録にあたる本作は、〈九州派〉時代から現在までの田部光子の活動を、作品と資料によって明らかにするとともに、ひとりの表現者が社会のさまざまな障壁に立ち向かい、不平等に抗い、人々の背中を押し、なにより楽しみながら美術によって世の中を変革しようと走りつづける軌跡が刻まれたドキュメントでもあります。
(2022年・福岡市美術館)