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メカスの難民日記

5,280円

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砲火が飛び交う故郷を離れ、ポーランドなど近隣諸国へ避難するウクライナの人びとの心情を、自身と重ね合わせることがはたして出来るだろうか。燃えさかるほのおも、瓦礫も、泣き叫ぶ声も飛び交う怒号も、わたしたちには無関係で、平和で穏便な毎日が広がっているというのに。せめてわたしたちにできることといえば、彼らの眠れない日々を、あてどもなく不安な毎日を想像することしかできない。そして、なぜこのようなことが起こったのか。その背景にある歴史を知り、二度とモンスターを生み出さないよう不断の努力を続けるしかないのだと強く思う。 歴史を知るには書物に当たるのがいちばんだと思うのは、自分が本屋だから言うのではない。例えばこのジョナス・メカスの日記も、故国リトアニアを失い、ドイツの難民収容所でナチスやソ連に絶望し、孤独や飢餓に耐えながら、映画を観て、収容所新聞を発行する逞しさが文面から溢れるいっぽうで、壮絶な別離や虐待、アメリカ兵の慰安に連れて行かれる故郷の女たちや、息子を失った母親たちの悲しみといった戦争という非人間的な行為がもたらす様々な側面をわれわれの眼前にまざまざと見せてくれる。大文字で生きること。今ここに座って画面を見ているだけでは分からない、経験したことのない経験をわたしたちは想像しなければならない。 (2011年・みすず書房/新刊・デッドストック本)

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