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ロシア帝国領リトアニアは、ロシアから1831年と1863年に蜂起するが、いずれも失敗に終わり、リトアニア語による出版物が禁じられるなどロシア化政策が強化される。1877年の露土戦争の後、ロシア帝国とドイツ帝国の関係が悪化するのに伴い、1868年から第一次世界大戦が始まる1914年までの間に約635,000人、人口のおよそ20%がリトアニアを離れ、難民となりその多くはアメリカへ移住した。
200年前の歴史がまるでデジャヴのようにいま眼前で起こっていることと交差するとは思わないだろうか。歴史は、悲劇は、いつだって繰り返す。
幸いだったことは難民となった20%のリトアニア人の中にベン・シャーンという不世出の画家一家が含まれていたことだろう。アメリカに渡りニューヨークはブルックリンに住みはじめた一家。やがて石版画職人として働き出したシャーンは肉体労働者、失業者など、アメリカ社会の底辺にいる人々と身近に接していくうちに社会や世界にある不条理や貧困、戦争や差別を描くリアリズムの画家として活動をはじめる。
1970年4月号の『みづゑ』はそうした社会活動家として、リアリストとしてのシャーンの絵画に光を当てた特集を組んでいる。表紙も含めて好きな一冊。
(1970年・美術出版社/古書・経年ヤケ・ヨレあり)