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「自覚が生み出すものが真に本質的な行動だと合点できる領域があるとすれば、それは日常生活においてである。そこでは、物事は勝ち目の少ない賭けに委ねられ、我々はいつものようにそれに身を任せるしかないということを、過ぎゆく一瞬一瞬が、繰り返し教えてくれるからだ。」
ラウル・ヴァネーゲム
これまでゲリラガールズやイム・ミヌクをはじめとする国際的に活躍するアーティストとのコラボレーション、プロレタリア美術運動の厚木たかや、大正期新興美術運動を現代美術の文脈で紹介する展覧会企画、キュレーターや批評家、思想家などによる公開講座など、さまざまなアートプロジェクトを手がける川上幸之介率いる〈川上研究室〉による「PUNK! The Revolution of Everyday Life」展のカタログ。
カール・クラウスやダダイズム、レトリスムやギイ・ドゥボールらによるシチュアシオニスト・インターナショナルの活動の系譜としてロンドンのパンク・ムーヴメント、クラスというバンドの活動やライオット・ガールムーヴメントなどアーティストや運動を体系的に紹介するだけでなく、新自由主義が席巻する現代社会のシステムにいかに抵抗し、生き抜くか。読み手に再考を促す優れたカタログ。
本邦初訳のデヴィッド・グレーバー「ポスト労働者主義の悲哀――《芸術と非物質的労働》カンファレンス・レヴュー(2008年1月19日土曜日、テート・ブリテン)」(上尾真道訳)や、小倉利丸「不法占拠者たちの闘い―世紀末アンダーグラウンドが目覚めた時」を収録。
当カタログの売り上げは全額、インドで育児放棄をされた重症心身障害児施設「ダヤダン・メディカル・センター」(マザーテレサの家)で30年間無償ボランティアを行っている渋谷りつ子さんの活動費として寄付される。そんなスタンスもアナーキでパンク。
(2021年・倉敷芸術科学大学芸術学部 川上幸之介研究室)