new

"このように、両者は〈生きた「もの」〉と「筆で書く話」を巡る態度において、不思議なほど似通っている。そして、共に世間に発表することを前提にした文学から身を引いた理由もそこにあったと私は思っている"
(掠れうる星たちの実験)
柳田國男とサリンジャー。一見まったく接点のない東西の文学者たちから、その文学的態度における奇妙な共通点を発見し、二人の境遇や人生まで重ね合わせてみせる。すぐれた批評にぶつかったときに訪れる清々しさとはこういう読み物の事ではなかったか。
話題の長編小説『皆のあらばしり』に続いて矢継ぎ早に刊行された乗代雄介の最新刊は『群像』や『文藝』などの文芸誌、週刊誌やファッション誌に寄稿した書評と書き下ろし/単行本未収録の掌編9本を収めたバラエティブック的構造の一冊。しんしんとそぼ降る外の雪を眺めながら、コーヒーでも飲んでどうぞゆっくりお楽しみください。
(2021年・国書刊行会)