other




歩くという単純な行為は、複雑な発見に満ちている。いつもと同じ通勤路も少し歩みを止めて目を凝らせば新しい発見があり、自己が認知できる範囲を超えることにより、世界との新たな繋がりが生まれ、気づきがある。それは言い換えるなら「旅」だ。すぐそこの至近距離ですら捉え方を変え、主体をずらすことにより、それは旅という行為に置き変わる。
自然から着想を得たアクセサリーをデザイン・制作している宮田有里さんと、印刷会社でデザイナーとして勤務しながら、有里さんのアシストをしつつzineを作っている宮田森平さん。有里さんのブランドYURI MIYATAのインスピレーションの元となる、登山や旅先のトレッキングのことを森平さんが文章とフィルムカメラで撮影した写真でまとめたzine『BRANCH PAPER』最新作のテーマは「通勤路」。「MINIMAL HIKING」という副題の通り、いつも歩く通勤路を視点を変え、捉え方を新たにすることにより、心の中に生じるドラマとは言えない小さな気づき。その小さな気づきの積み重ねと、日常がハッとするほど美しく見える写真の数々。旅という概念を改めて再考する素敵な小冊子です。
(2021年・セルフパブリッシング)