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国内であろうが、海外であろうが、まだまだ自分が想像するよりも世界はとてつもなく広く果てしなくどこまでも続いていて、そのような見たこともないような場所へまったく臆することなく飛び込んでしまう人たちがいる。ぼくもそのような人たちの仲間に加わりたいと思い、中年になってから世界を見てやろうと躍起になっていたが、ほんとうに新しい視野が開けている人たちは旅から何かを掴もうと身構えているのではなく、旅を心から楽しみ、まるで暮らすように旅をする人たちのことだと思う。八幡平を縦走してきた帰りにぼくの店に立ち寄ってくれた宮田有里さん、森平さん夫妻もそのような気配を感じる人たちだった。
自然から着想を得たアクセサリーをデザイン・制作している有里さんと、印刷会社でデザイナーとして勤務しながら、有里さんのアシストをしつつzineを作っている森平さん。
少し夏の盛りを過ぎたある日、秋風のように二人からzineが届いた。有里さんのブランドYURI MIYATAのインスピレーションの元となる、登山や旅先のトレッキングのことを文章とフィルムカメラで撮影された写真でまとめたそのzineは、アメリカの西海岸ヨセミテとアイスランドの旅行記となっており、それぞれの旅の風景やトレッキングの楽しさ、そのなかにあるさまざまな気づきや出会いが真空パックされているような小冊子だった。
(2021年・セルフパブリッシング)