〈サイン本・ポストカード付き〉動物たちの家
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〈サイン本・ポストカード付き〉動物たちの家

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わが家の老犬が急にふらふらとよろめきだし、苦しそうに震え出したのは先週のことだ。すぐに動物病院に連れて行くと血液検査の結果、重度の腎不全だと診断された。それからというもの、まだ朝の涼しい時間帯に彼女をゆっくりと抱き抱えて家の周りを散歩させ、薬を噛み砕いてフードに振りかけたものを用意すると、ひと口一口手で口のなかに入れてやる。時間をかけて食べ終え、また抱き抱えてベッドまで連れていくと彼女はそれからほぼ一日中眠る。いつ果てるともない老犬の介助生活は、常になぜもっと早く気づいてやらなかったのだろうという後悔と、人間の勝手で今まで悲しい思いをさせてきてしまったという憐憫の気持ちでいっぱいになりながら今も続いている。いちばん大事な人をぼくの身勝手な理由で引き離してしまったことを今でも申し訳なく思いながら、水を飲んだ口を拭い、粗相をしたあとの尻を拭いてやる。抱き抱えるたびに軽くなる体の、その重さのことを思い、ベッドのなかで朦朧としながら彼女はどんなふうにぼくを見つめているのだろうか。そんなことを考えている。 写真家の奥山淳志さんから便りが届いたのは、そんな介助生活が始まったころだ。『庭とエスキース』に続き、新しい著書が出ることを知らせる手紙だった。タイトルは『動物たちの家』だという。新刊への思いを書き連ねた手紙と、奥山さんが撮った犬や猫たちの写真をあしらったポストカードが手紙には同封されていた。手紙を読み、ポストカードを眺めていたらなんだか涙が溢れてきて困った。動物たちと対峙したときに抱く、うまく言葉にできないことを奥山さんが書いてくれているのだろう。早くその新しい本を読みたいと思った。夕方、マンションに帰るとすぐに老犬の眠っているベッドへ行き、いつものように頭を撫でた。彼女の頭を撫でながら、もう少しぼくとぼくたち家族のこれからを見ていてほしい、心のなかでそんなことをお願いした。 もう今はどこかへ消えてしまった生命との、かけがえのない時間のこと。温かな感情と小さな友だちといた日々。奥山淳志『庭とエスキース』に続く写文集、第二作。奥山さんのご厚意により、サイン本・ポストカード付きが入荷。 (2021年・みすず書房)