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NASA APOLLO 11 – MAN ON THE MOON

5,500円

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〈ぼくらのクリスマス2020・#6〉 前代未聞の不況で物が売れない。今日のZoom越しの会議も終始業績の改善策を皆が持ち寄り、討議したが明確な解決策が見つからず、けっきょくは精神論で終わってしまった。家を出てコンビニに向かい、紙コップ入りのコーヒーを買って店の前でゆっくりと飲みながら一息ついた。うちの会社はたして年を越せるのだろうか。役員の一人として心配で仕方がなかったがなす術がなかった。つなぎ融資も底をつき始め、もはや背水の陣に近い状況といえる。自宅に戻ってまたパソコンの画面を見るのが嫌で、少し町のなかを散歩することにした。 まだ幼い頃、ブラウン管に映った月面着陸の映像に魅せられたわたしの夢は宇宙飛行士になることだった。いまはどうだろう、くたびれたシャツを着てくしゃくしゃの髪をしたわたしはたんなる一介のサラリーマンだった。駅のトイレの鏡に映ったわたしの顔を見る。あの頃のキラキラした純粋な眼差しはそこにはなく、淀んだ魚のような目をしてマスクを深めにかぶった中年男が映っていた。地下鉄に乗り、いつも目の保養をする洋書屋で気分転換をしようと思った。ずらりと並んだ写真集をはじから眺めていると気が紛れた。ふと平台の奥に"APOLLO11"という文字が見えた。棚から取り出しまじまじと眺めると、それはどうやらアポロ11号に乗船した宇宙飛行士たちの写真集だった。彼らが撮影した写真で構成されたその写真集はわたしにあの日を思い出させた。あのキラキラと夢のように輝いていた時代の、まだ未来が、前途がすばらしくひろがっていた頃の甘美な記憶。 写真集を小脇に携え、店を出たわたしはもう一度夢を見てみようと思った。 サンタクロースの衣装を着た青年がスクーターでわたしの目の前を大急ぎで通り過ぎていった。 (2020年・SPECTOR BOOKS)

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