new




表題作「青の時代」が持っているすぐれたモダニズムとセンチメンタリズムにまずやられる。青いカーテン、青いコート、青いセーター、青いマフラー、そしてブルーな人生のひととき。モディリアニとピカソの青の時代。
そして父を早くに亡くし、母方の実家である千葉の港町で女系家庭に育った安西本人の少年時代を投影したような短編たち。もの哀しさと郷愁に貫かれた救いのない少年時代と、エロティシズムと叙情性に彩られた美しい青年期の物語。
巻末に嵐山光三郎と著者自らによるあとがき。電通やニューヨーク時代を経て、平凡社でデザインの仕事をしていた安西水丸が嵐山光三郎の薦めで漫画を描くようになった。そのひらめきこそがすばらしく青々しい。
イラストレーター安西水丸が1974年から1977年にかけて漫画雑誌「ガロ」に不定期掲載された自伝的短編。本のコンディションは良好です。1987年の新版。
(1987年・青林堂)